第14章 Hot Spring*誠凛*
「…凛くん。」
振り向くと、少し険しい顔をした凛くんが立っていた。
私の横に腰掛け、綺麗な黒い瞳でじっと私を見つめた。
「どうしたの?」
小首を傾げて彼に尋ねた。
すると、彼はぎゅっと私を抱き寄せた。
ちょっと体勢が崩れて、私は彼の胸に飛び込む形になった。
力強く私を包む腕。
押し当てられた胸から伝わる鼓動の速さ。
回した腕から感じる彼の体の熱。
私の瞳を真っ直ぐ捉える優しい目。
言葉がなくても、名前が好きだよって体全部で表してくれている気がした。
「凛くんが覗きしようとしてたってちょっと疑っちゃった。ごめんね。」
そう言うと、大きな手が優しく頭を撫でてくれた。
不安にさせてごめんね、って言ってくれてるのかな。
凛くん、好きよ。
そう伝えるために、ふいに彼の唇を塞いだ。