第11章 選択
みんなは大倉の様子をみて、 動揺を隠せないでいた。
錦戸「今さら人間になんか!」
錦戸は吐き捨てるように言う。
渋谷「これは、我々が吸血鬼として存在することに
許しを得られないということか」
渋谷は考えるように呟いた。
横山「……………」
横山は、大倉の様子を見ながら考え込んでいた。
錦戸「納得出来んよ、俺は」
錦戸は壁を殴りながら言った。
大倉「…………」
大倉は、人間に戻った手を見つめながら、
悲しそうに涙を流した。
村上「みんな、落ち着けや、一回冷静になろう」
村上は動揺する仲間を制した。
私は、流れ続ける血を止めようと手を抑えたが、
深く切ったので、止まる事なく血が流れ続けた。
その血を、飢えた彼らは物欲しげに見つめた。
横山「雛の言う通りやな...、
これは俺らに、選択が3つ出来たって事や」
横山が私の前に静かに立つと、皆に伝えた。
安田「3つ?」
不思議そうに安田が答えた。
横山「選択はこの3つや。
1、この娘の血を吸わずに殺し、吸血鬼のままでいる。
2、この娘を今までの獲物と同様にして血を頂き、
人間に戻る
3、我らの能力を使い、彼女を仲間にする」
最後の選択肢に、みんなは大きく動揺した。
丸山「もう、仲間は増やさないって決めたやん...」
丸山が、弱々しく呟いた。
錦戸「横山くんの提示はよく分かった。
こいつを仲間にするか、殺すかの選択をせんと、
俺らの身が危ないって事やろ?」
錦戸は、悔しそうに冷たく吐き捨てた。
安田「えっ、どういう事なん?」
理解出来ずに焦りながら、安田は聞く。
村上「神を自分らの仲間にしたら、安全やろ?
逆に、神を殺さな、俺らは消滅しなあかんってことや」
静かに村上が教えた。
渋谷「なるほどな、俺らに選べ、とな…」
理解した渋谷は悔しそうに言った。
丸山「えっ、みんなどうするん?」
不安げに丸山は周りを見回した。
大倉「また道を選ぶ時が来たのか...」
静かに言いながら、
大倉はひたすら、何十年ぶりに
人間に戻った手を見つめて呟いた。
横山「...とりあえず彼女は、
選択が決まるまで、奥の部屋に監禁や」
横山がみんなに合図をする。
その言葉は、
私が二度と光を見る事が出来ない事を悟らせた。
私は、震える脚を必死に動かして、逃げ出した。