第12章 十字架
私は、必死で部屋から部屋へと逃げ回った。
逃げながら、このホテルの造りに違和感を感じていた。
奥へと繋がる廊下に、
前に来た事があるかのような感覚を覚えながら、
自分の身を守る為に走っていた。
横山は、錦戸、安田、丸山にゲストを追いかけさせ、
大倉、渋谷、村上をその場に残すように指示をした。
残った4人は走り去る仲間を静かに見送っていた。
村上「横、俺らも行かんでええん?アイツらだけやったら、時間かかんで?もしかしたら朝になるんちゃうん?」
笑いながら村上は言った。
渋谷「考えがあるんやったら、
早よ言えよ、アイツらに聞かれたくなかったんやろ?」
渋谷は、呆れた顔で言った。
横山は仲間の問に答える事なく振り返り、
横山「....大倉、覚悟はええな?」
冷たく大倉に告げると、
躊躇なく大倉の首に噛みついた。
大倉「っう!!!」
突然の痛みに大倉は声をあげた。
二人は少し動揺したが、静かに見守った。
しばらくし、
横山が静かに離れると大倉は痛みからか
その場に座りこんだ。
村上「横、何がしたいんや?」
村上は横山の行動をみて、不思議そうに聞いた。
横山「俺の考えが正しかったら、
大倉はこれでもとに戻るはずや」
横山は、口元にこぼれる血を拭いながら答えた。
渋谷「もとに?」
渋谷が横山の言葉を聞き、
傷跡を見ようと大倉の手を掴み、目を妖しく光らせた。
渋谷「なるほどな、また俺らが噛めば、
また吸血鬼に戻るのか....」
そう言うと、横山を見ながら笑った。
横山「神の審判は、ややこしいことになってきたな」
横山は静かに呟いた。