第14章 番外編1 束縛な彼氏
「せーの、及川先輩、頑張って~!!!」
キャーとつんざくような黄色い声。
彼女たちの視線の先には、ユニフォームを来た及川さんがいた。
にっこり笑って彼女たちに手を振っている。
同級生には見ない顔。1年生なんだろう。
ヒラヒラする彼の手をバチンとはじめちゃんが叩いている。
怒られている……みたい。
それを見て、向こう側のコートにいる人たちが何か言っている。
黒いジャージを着た、今日の練習試合の相手チームのメンバーだ。
金曜日の放課後だからか、観客が多い。
特に女の子の数はハンパない。
相変わらず、及川先輩はモテる。
私……彼女がいても、関係ない。
「及川せんぱ~い!」
別の女子集団が別の金切り声をあげる。
及川さんは、懲りずにまたにっこり笑顔を向ける。
と、どうやら私がいることに気がついたらしい。
焦った顔で、視界からいなくなる。
するとすぐにスマホが震えた。
『これはなんでもないから!』
別に気にしてないのに。
変なとこで律儀だ、及川さんは。
はじめちゃんとのことやいろいろあった後、及川さんはちょっと変わった。
ちゃんと「好き」って言ってくれるようになった。
裏腹な態度も取らない。
……そのかわり、感情を素直に出してくれるようになった。
ちょっと、素直すぎ……?
「ありがっ……ざ~したっ!」
大きな掛け声にコートを見ると、試合が終わっていた。
うちの高校が勝って終わったらしい。
周囲の女の子は半泣きで喜んでいる。
結局途中から、持っていた本に没頭してた。
きっと及川さんはまだこれからミーティングとかなにかあるはず。
混雑が収まるのを少し待ってから席を立つ。
出口への通路を歩いていると、控室から大きな人影が出てきた。