第2章 宮崎健治
電車は相変わらず揺れている。それに合わせて自らの体も意志に反して揺れている。
無機質なイヤホンから流れてくるのはヨハン・ゼバスティアン・バッハが作曲したブランデンブルク協奏曲。
この曲はバッハが、1721年5月24日にブランデンブルク=シュヴェート辺境伯クリスティアン・ルートヴィヒに献呈した曲だ。だからこの曲はブランデンブルク協奏曲と言われる。
宮崎がクラシックに詳しくなったのは、大学の時個人的にそういう研究をしていたからだ。
特に理由があって研究したわけではない。ただ興味があった。それだけだ。
そのためクラシックが好きになった。しかし今のあのうるさい芸術的要素が少ない曲はあまり好きになれなかった。
クラシックのあのゆったりと心の奥底にまで響いてくる優雅なところが好きだった。