第1章 お仕置き?
「ちょっ…だから脱いじゃダメだって!」
そう言って中谷は四季の肩から落ちたコートをまたかけようとした。
「いーやーでーすー!熱いの!」
手を突っ張り暴れる四季に、また中谷は四季をコートで覆ったまま抱きしめ押さえる羽目になってしまった。
「……海藤くん」
「は!はい!」
ひんやりとした声色に海藤はビクッとした。
「詳細は今度聞くけど…あの状態は四季くんが元凶でいいのかな?」
「あ…いや…あの」
「どうなの?」
「…」
「早く答えてもらってもいいかな?四季くんは誰かに無理やり飲まされたの?」
ニッコリと笑って訪ねてくる七瀬に海藤は正直に答えた。
「自分から進んで飲んでました」
「そう…ありがとう」
海藤から話を聞いた七瀬は中谷と四季の元へと近づいた。
「な…七瀬、本当にこれは誤解で…」
二人の近くには四季の上着が散らばっているのを見て、七瀬はそれを回収すると、笑顔で中谷を見た。
顔は笑っているはずなのに視線は鋭い。
「君へのお礼は今度させていただきます。まずは四季くんをこっちにもらってもいいですか?」
それまで暑さばかりを気にしていた四季はやっと目の前に大好きな人がいることに気が付いた。