第50章 失いたくないもの
暦
「もう、話は終わり…で良い?」
日向
「うん…」
暦
「じゃあ、私もう行くね?昼休憩の間に、先輩達に謝りに行こうと思ってたから」
翔陽にそう言って、私は職員室を後にした。
階段へ曲がる瞬間…職員室の方を振り返ると、翔陽は私を見ていた。
その顔が、どこか泣きそうに見えて…胸が、苦しくなるのを感じた。
その後、私は先輩達の教室を回った。
龍先輩と夕先輩に、謝ったらバシバシと背中を叩かれた。
力先輩達も、笑って許してくれて…寧ろ心配されたから、更に申し訳無く思った。
澤村先輩と東峰先輩は、謝る私に何度も「大丈夫か」と聞いて、深く心配してくれた。
菅原先輩は、そんな2人に「落ち着け」と言いつつ、私の頭を撫でてくれていた。
潔子先輩も、「謝らなくて良いよ」と許してくれた…その上、私が暗く見えたのか元気付けてくれて、思わず泣きそうになってしまった。
1年生の教室に戻って、飛雄にも謝ったら、めちゃくちゃ怒られた…何度も「ボケ」って言われて逆ギレしかけたけど、何とか抑えた。
悪いのは私で…また、謝らなきゃいけなくなるから…
──午後の授業開始から放課後まで…私は、その時間をとても長く感じた。