第10章 秘密
今までに見たことがないような高尾の表情だった。
悲しいというよりも、寂しいというような。
「真ちゃんになら言っても問題ないと思ったんだけどさ、アイツが知ったらまた変に気を使うと思うんだ。だから黙っといてやってくれよ。ヨロシク!」
「…ああ、分かった。」
「じゃあ帰るかー」
高尾は自転車のハンドルを握り、再度ペダルをこぎ始めた。
これはなんと言えばいいのだろう。
まさか、あのいつも明るく楽しそうに笑っている高槻にそんな事情があったとは知らなかった。
あの日心結が言ったことも本当で、全てはこういうことだったのだ。
膝を抱えてしばらく考え込む。
高尾も無言でせっせと自転車を走らせて、口を開こうとはしない。
手に持っていたおしるこを飲むと、さっきまで温かかったのにもう冷たく冷えきっていた。