第8章 それはきっと、
高尾くんと話せるのはとても嬉しくて幸せなことだけど、ずっと二人きりで話していると頭が爆発寸前になる。相手を変に意識して、緊張で何を話したらいいか分からなくなる。
昔から人前で話すことが苦手だった夢は、誰の前でも物怖じせずに楽しそうに笑って話している高尾の姿を見て羨ましいと思っていた。それは心結も同じだが、ビクビクしているわたし相手にいつも話しかけてくれる。話しかけたときも嫌な顔をせずに話を聞いて会話してくれる。それが嬉しかった。
長くなった委員会が終わり、外を見ると辺りはもう暗くなっていた。急いで帰ろうと校門まで足早に歩いていると、途中にある体育館の中から聞こえてくるドリブル音。もしかして、と思い近付いてみると体育館の扉は開きっぱなし。恐る恐る覗いてみると、そこには一人練習に打ち込む高尾の姿があった。
すごいなぁ、と思いながらしばし中を覗いていると、高尾がボールを置いて扉に向かってくるではないか。
まずい、と思いながら体育館を後にしようとするが、
「お、西堂じゃん。」
高尾は足早に去ろうとする夢の後ろ姿を見つけて声をかけた。
見つかってしまった、と思いながらも声をかけてくれたことが嬉しかった。でも邪魔してしまったかもしれない。
高尾は全く気にする様子もなく、水道で顔を洗うと扉の階段のところに腰掛けた。
バスケノートを渡すと話題は心結の話になる。高尾にとって、心結はどんな存在なんだろうか。
お互い大事な存在なんだってことは見ててわかる。
高尾はいつも心結と話しているとき楽しそうだし、いつも笑顔だ。まぁ、誰と話していてもそうなのだが。
心結は、高尾はいつも一緒にいる兄妹みたいな存在と言っていた。昔からずっと一緒にいるし、何をするにも一緒だった。
実際、少し心結のことを羨ましいと思う。
だっていつも高尾と一緒にいられるのだから。
毎日高尾の顔を見て高尾と話をできるのが心底羨ましかった。