第8章 それはきっと、
楽しそうに笑う高尾。
高尾はどう思っているのだろうか。
夏祭りの日から話す回数も増えた。だが心結と仲の良い友達としか思っていないだろう。
いつも決めたところで思いとどまる。優柔不断なところが短所なのは重々分かっていることだ。
でもあと一歩勇気が出ない。
相手が高尾くんだから、なおさら。
恋をするとはこういうことか。
話しているだけで鼓動が早くなって、幸せだけど言えないことがもどかしい。こんなにも苦しいなんて。
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「WCまで真ちゃんだけ別メニューかぁ」
「勝つために、仕方ないのだよ」
監督から呼ばれ、一時体育館から離れていた心結と緑間。要件が終わり、話しながら体育館へと続く渡り廊下を歩いていると、
「…っ待って!」
心結は少し先を歩く緑間の練習着の裾を引っ張った。
「なんなのだよ」
「しーっ」
渡り廊下を曲がろうとすると、その先の水道に高尾と夢の姿が見えた。
「行かないで!」
「何があるのだよ」
緑間は不思議そうに覗こうとすると、またも心結は緑間の裾を引っ張った。
「今夢と和成がいるの!」
そう言われ、緑間は建物の影から先をのぞき込んだ。するとそこには立ちながら話す高尾と夢の姿が。
心結も緑間の下からその様子を伺う。
「なぜ行ったらダメなのだよ」
「あーっもう真ちゃん鈍感すぎ!ってゆーか静かにして!」
心結は小声で口の前に人差し指をあてててみせた。すると、
「お前ら何やってんだ」
「あ、宮地先輩」
声のした方へ振り返ると、そこには部室から戻ってきた宮地と木村と大坪だった。
今度は緑間も一緒に先輩に向けて人差し指を口元にあてる。
「しーっ」
「静かに、なのだよ」
宮地は言われたように静かに先を覗き込んだ。
「高尾じゃん」
「少しだけ二人きりにしてあげたいんです!もう少し待ってください!」
「ほほぅ」
先輩たち3人は感づいたように、二人の上から建物の影に隠れて再度高尾と夢を覗き込んだ。