第8章 それはきっと、
「湿布貼るから、見せて。」
高尾は大人しく脚を心結に出してみせた。
よく見ると、足首が赤く腫れているのがわかる。
「大丈夫?痛くない?」
「あぁ、だいじょぶ。」
心結は手際よく腫れている部分にコールドスプレーを吹きかけると、その上に湿布をはった。
「ほら!もういいよ!気をつけてね!」
「ん、さんきゅ。」
「真ちゃん待ってるから、戻ろ」
「……………心結、」
「え、なに?」
コールドスプレーを持って戻ろうとする心結を、高尾は呼び止めた。
「……寂しくねぇの?」
「……?」
「中学の時さ、寂しいっつって泣いたときあったじゃん?今あの時のこと思い出したんだ。……今は寂しいって思わねーの?」
いきなりの言葉に心結は少し驚いたよう。
俯いて口を開いた。
「……そんなに寂しくないかな。あの頃よりはわたしも成長したと思うしね。それにWC出場も決まって、わたしももっと頑張らなきゃって思うし!」
「………………」
「夢も真ちゃんも、他の友達も先輩もいい人ばっかりで今すごい充実してるんだ~」
「………そっか。ならよかった。」
「和成も、いつもありがとね。」
「ん。…でも、何かあったら頼れよ?」
「もう随分助けてもらってるから、いつか恩返ししなきゃね!ほら、真ちゃん待ってるから行こ!」
心結は高尾の腕を引っ張った。
立ち上がり心結に腕を引かれて歩いていく。
「遅かったな、」
「待たせてごめんな、真ちゃん」
「さ、帰ろ!二人とも、この時期に怪我しちゃダメだからね!」
「分かっているのだよ。」
空には既に星が瞬いていた。