第6章 此処から
心結のとなりで夢はあたふたと発する言葉を探していた。
「ちがうの!そーゆーことじゃなくてっ!!」
「もしかして夢、緑間くんのこと好きなの?」
「違うよぉ!緑間くんじゃない!」
夢はブンブンと手を振った。
顔も赤くなっている。
「え、緑間くんじゃないの!?……え、だれ?………もしかして、和成…?」
心結が高尾の名前を出した途端、夢の顔がさらに真っ赤に染まった。
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「…まさか、夢の好きな人が和成だったとは…」
驚いている心結の横で、夢は膝を抱え込んで顔を真っ赤にして俯いていた。
「言ってくれればよかったのに!」
「だって…恥ずかしかったし、心結ちゃんと高尾くん仲良しだから言いにくくって…」
「……そっかぁ、和成かぁ……なんで?」
夢はゆっくりと顔を上げてボソボソと話し始めた。
秀徳高校に入学したての頃、夢は帰り道に通る公園の横を歩いていた。すると、目の前にいきなりバスケットボールが転がってきたため、夢はそのボールを拾い上げると、走ってくる少年の姿が。
少年は夢に礼を言い、ボールを受け取るとすぐにバスケコートに戻りまたバスケをし始めた。
少しその様子を眺めていると、その姿に釘付けになる。実に楽しそうにバスケをしていた。その少年こそ、
「高尾くんだったの。あの時は制服着てなかったからどこの高校だか分からなかったんだ。でも次の日学校行ったらその男の子が自分と同じ学校で心結ちゃんと話してるんだもん。ほんとにびっくりしたよ」
「すごいね、それ!運命だよ!」
「まぁ、高尾くんは覚えてないだろうけどね!」
夢は恥ずかしそうに顔を両手で覆った。