第6章 此処から
I.H予選敗北から一日。一息つく暇もなくまたいつもどおりに練習が始まった。居残り練習も最近は毎日心結も付き合うようになり、その度にいつも三人一緒に帰っていた。
毎日一緒に過ごしているとその人のことが良く分かるようになる。緑間のことも同様だった。
今では全中のときと見方が違う。
本当はプライドが高くて、偏屈で、でもそこが面白くて、いつもツンツンしてるけど本当は優しい性格なのだ。そして元から才能があるにも関わらず努力家。
少し偏屈なところがありながらもバスケ部の皆が緑間を一目おいている理由はそこだった。
I.Hが終わってから、一番変わったのは緑間。
入部したての頃はチームプレーはおろか、パスさえまわさず、ボールはすべて自分のもの。チームプレーらしいものなんてひとつもなかった。
だがI.H予選で敗北を経験してから、だんだんと緑間のプレースタイルも変わってきた。ボールは全部自分のものではなく、パスでもシュートでも仲間を頼るようになってきた。一人でバスケをするのではなく、チーム一丸となってバスケをする。そのことでチームの雰囲気は格段によくなり、みんなの笑顔が増えるようになった。
「緑間くん、最近顔が優しくなった」
居残り練習を終えた帰り道、ふと心結が呟いた。
「…どういうことなのだよ」
「あ、それめっちゃ分かるわ」
「前まで目つきが怖かったってゆーか、近づき難かったってゆーか」
「すげー話しかけづらかったもんなー」
「でも今は、よく笑うようになった!」
「笑ってなどいない」
「ニコニコ笑ってるわけじゃないけど、表情が優しくなったなーって」
「最近じゃパスもまわしてくれるしな♡」
「……勝つためだ。I.Hで負けたのはオレの責任があると思っている。WCに出場するためにはオレが一人でシュートをしているだけではダメだ。」
「真ちゃん……!」
「緑間くん……!」
緑間のまさかの言葉に心結と高尾は目をウルウルさせた。
「真ちゃん!オレ真ちゃんの口からそんなこと聞けるとは思ってなかった!感動した!」
「わたしも感動したよぉ…うっ…」
「わっ笑うな!」