第6章 此処から
心結ははぁーっと長いため息をつくと、続けた。
「わたしも、気持ちわかるよ。」
「……?」
「わたしね、あの時和成たちのバスケ部のマネージャーだったんだ。みんなすごい努力して頑張ってあそこまできたのに全中の最後の試合であんな負け方して。わたしは直接コートに入ってたわけでもないし、一番悔しいのは和成たちだって分かってる。でもやっぱり応援してた人たちが負けるのは悔しい。ごめんね!こんなこと言って!」
緑間はただ黙って聞いている。心結は苦笑いしながら傘を緑間に突きつけた。
「邪魔してごめんね、でも風邪引くからそろそろ中入ってきてね!先輩たちも待ってるし!」
心結はそう言うと緑間に背を向ける。
緑間は、その場を去ろうとする心結の手を引いた。
「待て、これではお前が濡れてしまうだろう。オレも戻るのだよ。」
緑間は口元を微かに緩めてそう言うと、心結を半分傘の中に入れロッカールームへと歩いていった。
「…そういえば、あの時はすまなかったのだよ」
「あの時?」
「全中の時の試合だ」
「すごい今更だね」
「さすがにあの時の試合はオレたちも態度が悪かったのだよ」
「あの時の試合はさすがにちょっとイライラしたなぁ。その上ボロ負けしたしね。みんなそれで躍起になったりいろいろあったけど、それでも和成もわたしもバスケ大好きだよ。」
心結はにっこりと緑間に微笑みかけた。
「もう終わったことだし、それに今は同じチームメイトなんだからさ!これからこの話はナシね!」
「…分かった。今回は残念だったが、WCは楽しみにしているのだよ」
「うん!また明日から頑張ろうね!」