第17章 もう大丈夫
一生懸命に顔を手で覆う緑間が可愛くて、やっぱり心結は笑った。
彼の不器用な優しさにまた泣いてしまいそうになるが、それをぐっと堪えて緑間に「ありがとう」とお礼をすると、また一層緑間の顔が赤くなったような気がした。
「…今日の真ちゃんやけに素直」
「きっ、今日だけなのだよ!!」
「…たまに素直になってくれればそれでいい。わたしもたまに辛くなったら真ちゃんに頼るから」
「…ああ。」
「約束ね!」
そう言って小指を出す心結に、緑間もぎこちなく小指を出して心結の指に絡ませた。
ーーー高槻の涙を見たあの日。
公園で初めて高槻の弱音を聞いて、涙を綺麗だと思ったあの日からオレは高槻に惚れていた。
いつも元気で明るく振舞っている高槻からは想像もできないが、本当は心の中では寂しさや不安を隠すため必死で、オレには分からないような苦労もたくさんしてきたのだろう。
辛い時は辛いと言えばいいものを、なお周りに迷惑をかけまいと影で泣く高槻を、守りたいと思った。
もう寂しい思いはさせたくないと思った。
その時の曖昧な気持ちは今も変わらず、さらに深まっている。
こんな感情生まれて初めてだ。
まさかオレがここまで夢中になってしまうとは想像もしていなかったのだよ。
ベンチに座って、隣で嬉しそうに足を交互にユラユラさせている心結を見て、好きになった時とまた同じ感情を抱いた。