第17章 もう大丈夫
「もう暗くなったし、そろそろ帰るのだよ」
そんなことを考えながらさぞかしし自分らしくないことを言ってしまったと羞恥を紛らわすように置いてあった荷物を持ってバッと立ち上がると、緑間はそのままスタスタと歩き出した。
「あっ!真ちゃん待って!」
緑間に置いていかれぬようにと心結もカバンを持って立ち上がった。
自分で言ったにも関わらず、今さら恥ずかしさが込み上げてきて心結の顔を見ることができない。
意を決して少しの羞恥とたくさんの充足感で後ろを振り返ると、いつものように自分のあとを必死についてくる心結と目が合って緑間はすぐさま目を逸らした。
その代わり、
「…手を出すのだよ」
「手??」
不思議そうに右手を差し出す心結の小さな手をまたギュッと握った。
「今日真ちゃんどうしたの?デレすぎじゃない?ツンは?」
「…今日はこういう日なのだよ。いいだろう、たまには」
「うん!いいと思う!」
満面の笑顔で言う心結に、緑間もフッと笑った。
まだまだ外は寒いけれど、心と手はあったかくて胸はいっぱいの安心感と充足感。
未だにこうして緑間と共に肩を並べて歩けることが嬉しくて、心結は心の中で呟いた。
『この幸せがずっと続きますように。』
と。