第17章 もう大丈夫
「…お前は今、寂しいとは思わないか?」
少し小さな声で遠慮がちに言う。
遠慮なんていらないのに、と思いながら心結は答えた。
「ぜんっぜん寂しくない!大丈夫!」
「…そうか。」
心結の笑顔を見ると、緑間も安心したように笑った。
「今は全然寂しくないよ!」
「ならよかった。…以前話を聞いたことがあったからずっと気にかけていたのだよ。」
「ごめんね、ありがとう。この前久し振りにお母さんにも会えたし全然寂しくなんかない。……でも一つ話していいかなぁ?」
「構わない。」
心結は再度礼を言うと、ゆっくりと話し始めた。
「前にお父さんはもういないって話はしたよね?そのことについて最近ずっと考えてたの。何であの時お母さんはわたしにウソをついたのかって」
ゆっくりと優しい声で話す心結に、緑間はただコクコクとうなずきながら聞いていた。
「病気は突発性のものでもう救急車で運ばれた時にはもう息を引き取ってたの。それをお母さんは知ってたはずなのに何年経ってもわたしに言ってくれなかった。それは何でだったんだろうってずっと考えてた。」
もう完全に日が沈んだ誰もいない静まり返った公園で心結が一方的に喋る。
だんだんと暖かくなってきたとはいえ3月夜はまだ寒くて背中が冷える。でもなぜだか心はあったかくて、体さえもほわっとあったかくなっていくような気がした。