第17章 もう大丈夫
沈んでゆく夕日を眺めながら、二人並んでベンチに腰掛ける。
ドキドキしててぎこちないけれど、何故かそれが落ち着く。
話す内容なんていくらでもあるはずなのに、付き合うようになってからさらに相手を意識してしまって、二人きりになるとうまく話を切り出せない。
それが嫌で、今度はなんとか自分から話しかけようと言葉を探していると、またこの沈黙を破ったのは緑間だった。
「……高槻」
「…ん?」
名前を呼ばれて振り向くと、そこには夕日で赤く照らされた緑間の横顔があった。
「とうとう、先輩達も卒業してしまったのだよ」
「そうだね。私たちも2年生だよ」
「もう1年経つ。本当に早いのだよ」
「ほんとに早い。真ちゃんたちにもあと少しで後輩ができるし、真ちゃんと出会ってからもう1年かぁ〜」
「…色々なことがあった。辛いこともあった。……だが」
「…だが?」
緑間はそこで一旦言葉を切って深呼吸してから言った。
「……やっぱり何でもないのだよ」
「ええ?そこまで溜めておいて!?」
何があったのか、緑間はぷいっと顔を背けた。
「えー?気になるなぁ」
「大したことないから気にするな」
心結は頬を膨らませると、言った。
「…わたしはいろいろ楽しいこともあったし、辛いこともあったけどみんなに出会えて充実した1年だった!」
「そ、そうか」
「それにね!真ちゃんのこと好きになれてよかった!」
少しはにかみながら言う心結の言葉に、緑間も同じように顔を赤くした。