第17章 もう大丈夫
「帰る!じゃ!」
そう言って荷物を持った高尾に、仕方なく心結も置いてあった自分のカバンを持ち上げようとすると、
「お前達はまだここにいろって!」
「…へ?」
高尾の言葉の意味が分からなくて、心結は再度問いかけた。
「だって、まだ帰りたくねえって顔してる」
「えっ、」
「じゃ、オレは先帰るから!ばいば〜い!二人で仲良くね〜!オレも夢に電話しよーっと!!!」
高尾はそう言うと、止める間もなくカバンを抱きしめて走り去っていった。
「…行っちゃったね」
「…行ってしまったのだよ」
二人で高尾の走り去っていく姿を呆然と眺めながら、高尾の背が見えなくなった頃にふと緑間の顔を覗いてみようと上を見上げると、偶然にも緑間と目が合って、恥ずかしくてすぐさまお互い目を逸らした。
しばらく沈黙が続く。
恥ずかしくて、気まずくて、でも何か喋ろうと思って頑張って言葉を探していると、その沈黙を先に破ったのは緑間だった。
「…高尾は本当に何でも分かるのだよ」
「…え?」
「高尾はお前の表情を見ただけで大体のことは分かってしまうのだよ。」
そう言うと緑間はふっと口元を緩めた。
「いつかオレも、」
「…え?」
緑間の言葉は最後まで聞こえることなくそこで途切れてしまった。
「とにかく、座るのだよ」
そう促されて、話の続きが気になるものの心結は緑間の隣に腰掛けた。