第16章 ユラユラ
「…本当にいいの?」
「いい。…それに、これ作るのに苦労したんだろ?」
「なっなんでわかるの!?」
「あん時、指に絆創膏だらけだっただろ?だからもしかしたら指ケガしてまで作ってくれたのかなーって」
まさかそんなことまでバレていたなんて。
顔から火が出るほど恥ずかしくなる。
「…好きな女から貰うものはなんだって嬉しい」
「…へ?」
「だからヘタとか比べられるとか気にすんなよ。つかすげーよく出来てんじゃん。よーし、カバンにつけよーと」
「…高尾くんっ」
やっぱりこれがいつも大好きな高尾だ。
少しからかってくるような優しい笑顔に、またキュンとした。
「…高尾くんっ」
「んー?」
「…すきっ」
恥ずかしいけれど、ちゃんと自分の気持ちを伝えるために思い切って言ってみた。すると高尾も笑って返してくれた。
「オレも好き!」
完全に星が瞬く空が訪れて、二人並びながら何をするでもなくこの幸せに浸る。なんとなく一番星を探して、見つけた途端嬉しくて高尾に語りかけようと斜め上にある高尾の顔を見ようとすると、ふと高尾と目が合った。
「っ!」
恥ずかしくなってすぐさま目線を逸らすと、高尾に名前を呼ばれてくるっとこちらを向かされた。そしてまた視線が交錯する。
いきなりのまさかの事態に自分でも分かるほどに顔が赤くなっている。
顔が熱くて、この顔を見られたくなくて顔を下に背けようとしても高尾のグレーの瞳に射止められたまま目が離せない。
「高尾くんっ?…どうしたのっ?」
「…夢」
この瞳に見つめられたままだととろけてしまいそうで、夢はギュッと目を瞑った。
それと同時にクスクスと聞こえる笑い声。ゆっくりと目を開けてみると目の前で高尾がクスクスと笑っていた。