第16章 ユラユラ
「でもオレはお前を迷惑だなんて思ってねーし、お前を庇ってケガをしたのも自分の意思でお前は何も悪くないと思ってる。」
目を見ると、彼は限りなく真剣な目つきだった。
その目が本心なんだと思わせてくれる。
「迷惑なんかじゃねーし、お前のことイヤだと思ったこともねえ。だからこれからはこんなに自分を責めるのはやめろよ?分かったか?」
「……っ」
何故彼はいつもこんなにも優しいのだろう。
その優しさ故に傷付くこともあるだろう。自分を責めてしまうこともあるだろう。だがそれでも彼の言葉を信じようと思った。
「高尾、くん…っ」
高尾のその言葉にまた泣いてしまいそうになる。
高尾は笑いながら慰めるように背中をさすってくれた。
「ありがとうっ…」
「だからこれからは言いたいことがあったらちゃんと言ってくれよ?」
「…うんっ」
「お互いにそうしてたいからさ!」
そう言って優しく笑いかけてくれる高尾に夢も目をこすって精一杯の笑顔で答えた。高尾のあったかくて大きな手が頭をなでてくれて、大きな安心を与えてくれる。
「…なんかすげーヘンな感じだな。」
「…ん?」
「すげー恥ずかしい。」
「ふふ、高尾くん顔赤くなってる」
「お前だって真っ赤だし!」
自分でも分かってはいたものの、改めて言われるとなんとも恥ずかしくなってさらに顔が熱くなるのを感じる。けれど同じように顔を赤くしている高尾を見てなんとも嬉しくなった。
「それより!お守り!」
話を逸らすように高尾は無理やり咳払いをして言った。
「…お守り?」
「オレのために作ってくれたんだろ?ならオレにちょーだい?」
ずっと握りしめていたお守りを思い出す。
この短い間にいろんなことがありすぎてすっかりお守りは汚れてくたびれてしまった。だがこのお守りが本当に二人を守ってくれてこうなるまで導いてくれたと考えると手放さなくてよかったと思えた。