第16章 ユラユラ
「…好きに、決まってんだろ」
「…ありがとうっ」
「そんなこと気にしねーよ。むしろこれでおあいこだろ?」
「…うん!」
そうこうしている間に日もだんだんと沈みかけて、遠くでは黒い空が見える。カラスの鳴き声も聞こえなくなってきて、夕方も終わりを迎えていた。
「それとね、もう一つ」
「もう一つ?」
「…これ、」
そう言って夢がカバンから取り出したのは一つのお守りだった。
「…この前の」
「…本当はこれ高尾くんに渡そうと思って作ったものなの。でもちょうど渡そうと思った時にきれいにできてるお守り見せられて、どうしても比べられるのがイヤで渡せなくて咄嗟に嘘ついて捨てようと思ってたんだけど捨てられなくて…」
「やっぱり。…分かってたぜ」
「…え?」
「バスケ型にK.T.って、オレのことだろ?絶対に夢からのプレゼントだと思ってワクワクしてたのに夢が他のヤツにあげるって言うからすげー妬いたんだぜ?」
「あの時は夢中でっ…ほんとはこんなのあげるの高尾くんしかいないのに嘘ついてっ…!」
「よかった。安心したのだよ〜」
「少しでも高尾くんに喜んでほしくて…」
「…すげー嬉しい。さんきゅ。」
このお守りを作ってよかった。
今やっとそう思えた。
あの時高尾に渡せなかったけれど、こんなに汚くなってしまったけれど、少しでも作った意味があった気がしてなんだか嬉しくなった。
「だからさ、もう迷惑だなんて言うなよ?」
「…え?」
「あの時お前はこれ以上オレに迷惑かけられないって言ったよな?」
「…うん」
あの時のことをちょうど思い出す。
あの時はもうこれ以上高尾に迷惑をかけたくない一心で無理やり自分から高尾に別れを告げたことを。