第16章 ユラユラ
笑いながら夢を抱き締めると、夢も優しく笑ってくれた。
「…やっと両想いになれた」
「…ん?」
「ずっとこうなりたかった…ずっと高尾くんを好きでいてよかった…」
「…夢」
優しい夕日が二人を照らした。
見えるのはキラキラ光る川と遠くに見えるネオンの光だけ。それでも今はとても満たされた気分だった。
「…あのね、高尾くん」
「なんだよ?」
「…実はわたしも高尾くんに謝らなきゃいけないことがあるの」
夢はまた体育座りをして丸くなると言った。
「…わたしね、ほんとは最初から高尾くんが心結ちゃんのこと好きだって知ってたの。高尾くんが付き合おうって言ってくれた時から」
「…何で知ってた?」
「わたしと一緒にいても高尾くんの目はずっと心結ちゃんを追ってたから。だからわたしもできるだけ高尾くんと心結ちゃんを遠ざけようとした」
「…なのになんでもっと早くオレを振らなかった?」
「…もし高尾くんは心結ちゃんのことが好きだったとしても高尾くんと少しでも一緒にいられるならいいと思ったんだぁ。…高尾くんがわたしのことを好きじゃなくても、わたしと心結ちゃんを重ねて見てくれるだけで嬉しかったの。」
「………」
「これがキッカケでいつか高尾くんの目がわたしに移ってくれないかなって思いながらも高尾くんを利用してた」
「…夢、」
「ごめんね!今さらこんなこと言って!そのまま隠しておこうと思ったんだけど高尾くんも話してくれたのにわたしだけ黙ってるのはイヤだったから!」
夢は涙を拭うとにっこりと高尾に微笑みかけた。
その笑顔は後ろで真っ赤に光る夕日よりも輝いて見えた。
「だからわたしだって最低なんだよ!……それでも、それでもいいって言ってくれる……?」