第16章 ユラユラ

「…夢？」


見ると、夢は小刻みに肩を震わせながら小さな声で嗚咽を堪えていた。


「……ごめ」


また謝ろうとすると、その言葉は夢によって遮られた。


「……もうイヤなのに…」


「…へ？」


「忘れようと思ってたのにっ…そんなこと言われたらっ…ウソでもいいから一緒にいたいって思っちゃうっ……」


夢は声を震わせながら弱々しい声でそう言った。


あぁ、やべー……。


「せっかくっ…わたしから別れようって切り出したのにっ…」


「………」


「あの時は夢中でっ…ずっと涙が止まらなくて、ほんとはずっと高尾くんと一緒にいたかったけどこれ以上迷惑かけたくなくてっ…だから別れたのに！」


「………夢」


「高尾くんのばかっ……」


…やべえ、かわいい…


不覚にも、胸のドキドキが止まらなくなった。
今の一言だけで完全に夢が好きなんだと改めて分かった。


ぎゅっ


言葉よりも先に気が付いたら体が動いていた。
このまま夢を抱き締めて離したくない。


「…高尾くんのばかっ…あほっ…」


「バカでもアホでもいいよ。」


自分の腕にすっぽり収まって泣いている夢を見てると今まで自分がやってきたことがどれだけ愚かで夢を傷付けてきたかが分かる。けれどその分だけ幸せが込み上げてきた。


「で？夢の返事は？」


「…え？」


「まだ告白の返事聞いてねーんだけど。お前の口から聞きたい」


「…っ」


恥ずかしそうに頬を赤らめて下を向く夢に、また可愛いと思った。少しいじめたくなる衝動が込み上げてくるけれど、いかんいかん。これが悪いクセだ。


「…すき」


「…ん？」


「…それでも高尾くんが好きっ…」


顔を真っ赤にしながら言う夢に、もう我慢の限界になってまたぎゅーっと夢を抱き締めた。
これで夢を抱き締めるのは３回目。