第16章 ユラユラ
「……大丈夫?」
そんなことを考えながら下を向いて歩いていると心結が横から声をかけてきて、ボーッとしていたせいかその声に少しビクッとする。
「へっ!?」
「また和成のこと考えてるの?」
「……っ」
悟られないようにしていたのだが、やはり分かってしまうらしい。夢は無言のまま小さく頷いた。
「…和成なら、大丈夫だよ」
「…えっ、」
『大丈夫』だと言った心結に、なぜかとても安心してしまった。根拠はないけれど、それは魔法のように大丈夫なんだと思わせてくれた。
また笑顔を取り戻して、笑顔の心結に自分も笑い返した。
と、その途端。
「……夢ー!!!」
聞き覚えのある、あの声。
「……えっ?」
いきなりの大きな声に周りの人たちも驚いているようだ。
けれど一番驚いているのは通行人でもなく心結でもなく、夢だった。
「……高尾、くん?」
制服のまま向こうから走ってくる高尾に驚きを隠せない。
なんでここにいるの? なんで、
「ちょっ…!」
その場で立ち尽くして、高尾までの距離はあと約3m。近くなればなるほどに緊張して胸の鼓動が大きくなっていった。
「……夢っ…」
「…っ…!」
距離は0。
背後からぎゅと肩を抱かれて抱き締められて、まさかのことに胸の鼓動がうるさく鳴り響いて止まらない。今にも心臓が爆発してしまいそうだった。
「…わりぃ…驚かせて。でもこうでもしねーとお前は分かってくれないだろ?」
「……へ?……え?」
未だに何が起こっているのか分からず目をキョロキョロさせる夢に、高尾はさらに抱き締める腕に力を込めた。
「わりぃ。…コイツもらってくわ。」
「…もう、仕方ないなぁ」
「サンキュ!」
「え?……え?」
「じゃ!」
すると高尾は夢の手を掴んで走り出した。
「ちょ、高尾くん!」
「ついてこい!」