第16章 ユラユラ
「…それより、こんなことをしている場合ではないだろう」
「え?」
腕を組みながら言う緑間の意味がわからなくて、高尾は再度首を傾げた。
「この気持ちはオレよりも西堂に伝えるべきなのではないか?まだ言っていないのだろう?なら早く伝えるのだよ」
「でも夢は…」
「…高槻なら、このあと駅に向かうと言っていた。きっと西堂と一緒にいる。今なら間に合うのだよ」
「真ちゃんっ…」
「早く行け、バカめ」
緑間はフンっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「ありがと!行ってくるっ!」
礼を言うと、高尾はそのまま緑間に背を向けて駆け出した。
今ならまだ間に合うはず。応援してくれた緑間と心結のためにも一刻も早くこの気持ちを伝えなくては。
そしてちゃんとはっきりと夢に言わなくては。
無我夢中で走りながら合宿から駅までのルートを考えた。普通ならあのルートを選ぶが果たしてそこに夢と心結はいるだろうか。だが今はそんなことどうでもいい。とにかくいち早く見つけるのだ。
もう駅に着いてしまっていたらとか、別の場所にいるのではないかとか、考えられることは山ほどある。ここはもう運に賭けるしかなかった。
どうかあの場所にいてくれ…!
バスケで鍛えられたおかげで体力には自信があるが、夢中になっているせいかいつもより息が上がる。予想をしていたルートをひた走っても、二人の姿はどこにも見えなかった。
高尾はその場で立ち止まって、大きく息を吐いた。
予想が当たってしまったのか。
無意識に額を拭うと、そこにはもう汗が伝っていた。