第16章 ユラユラ
「…お前には癖がある。」
「…え?」
「お前は嘘をつく時、必ず視線を逸らすクセがある。」
その言葉は想像もしていなかった言葉だった。
まさかの言葉にあの時とは違う汗が流れそうになった。
「ウソなんかじゃっ…」
「だがオレが今、本当に好きなのかと問いかけた時お前は視線を逸らさなかった。」
「……え?」
高尾の必死の言葉を遮って、緑間は言った。
緑間に分かって貰おうの必死で、ただ熱くなっていた高尾に緑間のいきなりのその言葉はうまく意味が理解できなかった。
「お前はオレの目を見て視線を逸らさなかった。反対にお前は必死な時には相手の目を見て視線を逸らすことはないだろう。」
「…へ?……え?」
「だから今の言葉は本気だということなのだよ」
頭の中が整理できなくて、高尾は一旦深呼吸した。
そして緑間の言葉の意味を精一杯思考を働かせて考える。
「オレは夢のことが本当に好きで、」
「だから、お前が西堂のことを本当に好きだということは分かったのだよ」
高尾は目をパチパチとしばたかせた。
「……え?分かって、くれたの?」
「お前は本当にバカなのだよ。今ので分からないのか?」
「……っ」
「どうしたのだよ」
「ふえぇ真ちゃーんっ!!!」
たまらなくなって、高尾は緑間に抱きつこうとした。けれど緑間は軽くヒョイと抱きついてくる高尾を避けた。勢いのまま高尾は空振りし、そのまま高尾はバランスを崩して地面に倒れ込んだ。
「いって……」
「調子に乗るな。」
「抱き締めさせてくれよ!」
「気持ち悪いからやめるのだよ!」
「ぶぅ……」
高尾は納得がいかなそうに頬を膨らませて唇を尖らせた。