第16章 ユラユラ
「真ちゃんに言われたのがすげーキたんだよ。でもそのおかげで考えさせられた。」
「…ならよかったのだよ」
「ちゃんと夢に謝らなきゃな」
「…そうだな」
陽の光に反射して川はキラキラと光り輝いている。暗くなってきたと共に、遠くに見える街ではネオンの光が濃くなってきていた。
その光と影が、まるで今の自分の心を映したようだ。
「………でも」
「…?」
高尾は言葉を切って考えた。
…でも、そんな思いをさせてきて振られてなお、オレは夢に心を惹かれた。夢の必死な姿、一生懸命な姿、笑顔でこんなオレを好きだと言ってくれた姿に見惚れたんだ。
だから。
「…だからこそ考えた。オレは本当は夢をどう思ってるか」
「………」
「ちゃんと考えて、オレなりに答えを出したんだ。」
緑間は何も答えない。ただ黙って高尾の言葉を待った。
「……オレは、夢が好きだ」
「………」
「夢がいなくなってやっと分かった。オレが今好きなのは紛れもなく夢だ。それは嘘なんかじゃない。」
その瞳は真剣そのものだった。
目には光が照らし出されている。
緑間の反応が気になって、高尾はそのまま緑間の言葉を待った。
何と言われるだろう。怖いけれど、この思いだけはどうしても伝えたかった。
「……本当に好きなのか?」
「…ああ。」
「…嘘ではないな?」
「当たり前!」
緑間にそう問われ、今度こそ揺るぎない気持ちで答えた。
少し気恥ずかしくなって、高尾はギュッと拳を握り締めて唾を飲み込んで緑間の顔から視線を落とした。けれど緑間の反応も気になって、恐る恐る緑間の顔を伺おうとすると、その瞬間緑間と目が合った。ドキリとしてまた視線を逸らしそうになるが、その時だけはずっと緑間の顔を見つめていた。
緑間も高尾を見つめたまま静かに言った。