第16章 ユラユラ
いつぶりだろう。緑間と二人で帰るのは。
隣にいるのは緑間だけで、夢も心結もいない。チャリアカーで緑間を後ろに乗せてこぐこともなくなった。決してこぎたいわけではないけれど、どことなく寂しいような、何か物足りないような気もする。それに卒業式は明後日に迫っていた。これからは先輩達とバスケをするどころか会うことさえ難しくなるなんて今まで考えてもみなかった。そう考えるといっそう寂しさが強くなる。
そんなことを思いながら、どう話を切り出そうか考えていると、珍しく先に緑間が口を開いた。
「…もうケガは大丈夫なのか?」
「もう大丈夫。まだ完全に治ったわけじゃないけど普通に走れるようになったしへーき!」
「そうか。」
「うん。ありがと。真ちゃん優しいね」
「…いつもと変わらないだろう」
「いや、最近すげー優しいし幸せそう。うらやましいくらい」
そう言われたことが恥ずかしかったのか、緑間は微かに頬を赤らめた。
「それより!話とはなんなのだよ」
「あー…」
そうだ。
この気持ちは本物だ。
そうやって再度自分の気持ちを確かめて、思い切って口に出した。
「もしかしたらもう知ってるかもしれないけどオレ、夢と別れたんだ」
「…西堂に聞いた」
緑間は特段驚く様子もなく静かに答えた。高尾もこれといって驚かない。
「振られたって言ったほうが正しいのかもしれないけどさ、今考えたらとうぜんだよな」
「………」
まだ外は明るい。夕日が高尾と緑間の頬をオレンジ色に照らした。