第16章 ユラユラ
「…………」
「夢は自分のせいでオレがケガしたと思ってんだ。確かに夢を庇わなきゃオレはケガをしなかった。でも…っ」
「…和成、すごく夢のこと好きだったんだね」
「…は?」
心結は窓に身を乗り出して言った。
「だから命張ってまで助けたんでしょ?それに今の見てると分かるよ。」
……オレが夢を好き?
オレが?
「オレはっ……!」
「とにかく、夢が和成のこと嫌いになるはずないと思うなぁ。だから守ったついでに和成が夢のココロも救ってあげて!」
…オレが夢を好き?
今目の前にいる心結じゃなくて?
ずっと前から好きだった心結じゃなくて?
「夢には和成が必要だと思うよ。本当に好きならちゃんと言ってあげないと!」
鼓動の音が早くなった。
うるさいほど鳴り響いている。
なんだろう。この感覚は。なんか懐かしいような、
「最近落ち込んでた理由はそれね。」
「…お前はホント、なんでも分かるなぁ」
「…え?」
そうか、この気持ちは……
「…女ってすげぇ。マジで。…ありがとう」
「え?…うんっ」
何かが吹っ切れたような気がして、突然笑えてきた。
この懐かしい感じは、心結のことを好きになった時と同じだ。
「何いきなりそんなにニコニコ笑ってるの?」
「オレはいつだって笑ってんだろ?」
「でもなんか、気持ち悪い」
「うるせーっつーの!」
以前のように自然に笑えた気がした。
胸のモヤモヤもなくなって、心にのしかかっていた重りもどこかへ消えた。
ああ、オレは……
「でも、元気出たみたいでよかった!」
「やっぱ悩み事話せる人がいるっていいな」
「でしょー?いつでも相談してね!」
「サンキュ!」
オレは、夢が好きだったんだ。