第16章 ユラユラ
一日ぶりに教室に入って中を見渡す。
するとそこには既に緑間の姿があった。
ゆっくりと歩み寄って、以前通り緑間に話しかけた。
「真ちゃん!」
「…高尾か」
「昨日はお見舞い来てくれてありがとな。元気出たわ」
「ああ。もうケガは大丈夫なのか?」
「まだ全然治ってないけどあんまり痛くなくなってきた」
「…そうか」
昨日緑間が見舞いに来たあとに心結も見舞いに来てくれた。二人と話しているとふわっと心が少しでも軽くなるように感じたが、夢に振られたという話はまだ誰にもしていない。事故を起こしたうえにそんな話をしたら二人とも気にかけるだろうと思ったから。何よりも、まだ頭の整理がついてなくてそんな話言い出せなかった。
「この前まではオレ達だってギクシャクしてたのにさ、真ちゃんが見舞いに来てくれるとは思わなかった」
「お前が来て欲しいだろうと思ったから行ってやったのだよ」
「すげー上から目線だな」
「フン。」
緑間はフンと鼻を鳴らすとそっぽを向いた。
「…あん時はごめんな。」
「…オレも言いすぎたのだよ」
「真ちゃんは正しいよ。…悪いのは全部オレだ」
ケガをしたのも、夢に振られたのも、こんな気持ちになるのも。
全部オレが悪いんだ。
そんなことは分かっているけれど心の奥に何か突っかかっているものがあって、それを丸く収められない。どうしたらこの胸のモヤモヤが解消されるのだろうか。今まで味わったことのない感覚だった。
もう夢とは『恋人』ではなく『友達』だ。
だが夢はまだ自分のことを友達だと思って接してくれるだろうか。
自分が最低なのは重々承知だ。
もう今は脚の傷よりも心のキズの方が痛かった。
「…とにかく、安静にしているのだよ。これではしばらくバスケもできないだろうからな」
「……あー、早くバスケしてえなぁ……」