第16章 ユラユラ
次の日。
オレは重い脚を引きずりながら学校に来た。
脚には消毒が施され、包帯でぐるぐる巻き。制服のズボンで包帯は見えないけれど、膝の関節まで包帯が巻かれておりこの上なく歩きずらかった。
ケガのせいで今は歩きずらいしバスケなんてできるはずがない。
久しぶりに、こんなにむしゃくしゃする。それはケガのせいだけではなかった。
夢にフラれた。
無機質な病室で、突然夢に別れを告げられた。そのことが今でも心に突っかかって、脚のケガ以上に心が痛かった。一昨日のことなのにえらく時間が経った気がする。
この前まではこっちがフる側だったのに、今度は立場が逆転してこんなにもむしゃくしゃした気分になるのか。
なぜこんなことをしてしまったのだろう。
なぜ危険を伴ってまで夢を庇ったのだろう。
あの時は無意識で、体が勝手に動いていた。
何も考えずに夢を守ろうと必死でトラックの前に飛び込んだ。その結果がこれだ。
夢は大したケガはなかったし高尾も打撲と切り傷だけで済んだのは本当に不幸中の幸いだった。
あの時は自分がケガしているのも気付かずに夢が無事だったということに安堵した。
だがそれよりも一番は、夢にフラれたことだ。
夢は『これ以上迷惑をかけたくないから』と言ったが、これまで一度も夢を迷惑だと思ったことなんてない。今回のケガだって自分の意思だ。
それを伝えようと思ったのに、伝える前に夢は高尾の前から姿を消した。
何で、庇ったりなんかしたんだろう。
何で、振られたんだろう。
何で、悲しいと思ってしまうのだろう。
病室のベッドでもずっと一日中そんなことを考えていた。