第16章 ユラユラ
「…?どうした?」
「…何か、緑間くんに素直になれって言われるのヘンな感じ」
まさかそう言われると思っていなかったのか、緑間は拍子抜けしたように目を丸くした。
「なっ……!」
「緑間くん、心結ちゃんのこと好きになってからすごく変わったと思うよ。何か、とっても素直になった」
「そ、そうか…」
「まだツンツンしてるけど、見てると緑間くんほんとに心結ちゃんのこと好きなんだなーって思う」
「そんなに態度に出ているのか……」
「大好きオーラが出てるよ。……いいなぁ、素直になれる人がいて」
夢は少しだけ寂しそうに笑った。
「…まだ遅くはない。ちゃんと素直になるのだよ」
「うんっ。ありがとう」
ふわふわ浮かぶ雲に高尾の顔を重ねた。
高尾は今頃何をしているのだろう。
まだ病院のベッドの上なのか、それとも家にいるのだろうか。明日は学校に来るのかな、とか、来たら前みたいに友達としていられるかな、とか頭に浮かぶことは山ほどある。
別れたとしても、また以前のような関係で高尾を支えてあげたい。
高尾が命懸けで守ってくれたように、自分も高尾に精一杯恩返しをするんだ。
いつまでも泣いてないで、もっと強くなろう。
背中を押してくれた緑間に、夢はまた心の中でありがとうと告げた。