第16章 ユラユラ
道端から少し移動して、夕陽の見える河原に来た。
今の時間帯はスーパーの袋を下げた主婦や犬の散歩、ランニングをしている人がちらほら。
川を見ると水面に夕陽が反射してキラキラして、とても綺麗だ。
「キレイだね、夕日」
「…そうだな」
夢はそのまま草の上に腰掛けた。目の前にある石を川に向かって投げると、石は音と飛沫をあげて水の中へと消えていった。
普段から口数の少ない緑間はさっきの話を少し遅れて理解してからは察してか、さらに口数が減ってほとんど会話をすることなくここまで来た。気まずかったけれど、何となく緑間に話を聞いて欲しかった。
緑間も少し距離をとって夢の隣に座った。
「…心結ちゃんは?」
「高槻とは一緒に行ってない。あまり大勢で押しかけるのは良くないと思ったのだよ」
「…そっか。こうやって緑間くんとちゃんと話すのも意外と初めてだね。」
「そうだな。いつも四人でいたが、西堂と二人で話すのは初めてなのだよ」
気を遣ってくれているのか、緑間は他愛もない話に付き合ってくれていた。いつも周りにあんな態度をとっていながらも高尾の見舞いに行ったり、心結のことを大切にしているのが伝わってきたり、本当はすごく優しい人なんだと思う。自分でも怖いイメージを持っていたが、高尾と心結と一緒にいることで、緑間のイメージも変わっていた。
「…緑間くん」
「なんだ?」
「少しだけ話してもいいかなぁ?」
「あぁ。構わないのだよ」
「ありがとう。」
話すことで少しだけ心が軽くなるような気がした。
こんな話、誰にでもできるわけではない。緑間だからこそだった。