第16章 ユラユラ
次の日、高尾は学校を休んだ。
高尾が学校を休むなんて、初めてのことだろうか。
理由は事故による脚の怪我のせいで、心結と緑間はもちろん、監督やバスケ部員、そしてクラスの人々も皆高尾のことを心配していた。それを見ていると高尾がいかに愛されているかが分かる。
考えれば、自分が今何事もなく生きて学校に来られるのも全部高尾のおかげだ。
高尾くんが庇ってくれなかったらきっと今ここにわたしはいない。
そう思っただけで後悔と罪悪感と申し訳ない気持ちに支配された。そして怪我をしている高尾を一人置いて来てしまった自分に怒りも覚える。
『別れよう』
けれど高尾がこれ以上嫌な思いをしないよう、高尾にこれ以上迷惑がかからないよう、そう告げたことは正解だったと思う。やっと思いを口にできた。
今まで一緒に帰っていた相手がいなくなっても、もう好きな男の子と笑いあえなくても仕方ない。これは全て自分が悪いのだから。そう自分に言い聞かせて夢は一人でいつも通り家への帰り道を歩いていた。
本当なら、傷ついた高尾のそばにいてあげてほしいのは心結だ。けれど今心結には緑間がいる。
心結がどれだけ緑間のことが好きかは見ていてよく分かる。だから絶対に心結にはそんなこと言えるはずがなかった。
……お見舞いに行きたいのに、高尾くんに合わせる顔すらないよ。
そんなことを考えながら空を見上げると、もう日は沈みかけて真っ赤な夕焼け空が広がっていた。けれど、その赤はあの日見た血の色を彷彿とさせて全身が震えた。
もしかしたらトラウマになってしまったのかもしれない。足がくすんで、見るのが怖くなって夢はぎゅっと目を瞑った。
すると、
「…西堂?」
聞き覚えのある声に恐る恐る目を開けると、視界に入ったのは黒い色。ゆっくりと視線を上げるとそこに立っていたのは制服を着た緑間だった。