第16章 ユラユラ
もうどれだけ泣いただろう。
夢は一度も後ろを振り返ることなくただひたすら走った。
今後ろを振り返ったら、また思い出してしまうから。
楽しかったことも辛かったこともぜんぶ。
何も考えずに嗚咽を噛み殺してひた走って、家に着いた頃にはもう涙は止まっていた。
部屋に戻って引きこもっても、もう涙は枯れたように流れない。
ただ脳裏に浮かんできたのは大好きなあの高尾の笑顔だった。忘れようと強く願う度にあの笑顔が蘇ってくる。
自分で選択した道なのに胸が張り裂けそうで、夢はそのまま泣き疲れて眠りについた。