第16章 ユラユラ
「…なんでこんなこ…」
「高尾くんっ!」
高尾が話し終える前に、高尾の言葉を破ったのはずっと黙り込んでいた夢だった。高尾はじっとして、そのまま夢の言葉の続きを待った。
「高尾くん…っ…ごめんね。今までずっと辛かったよね」
「………?」
「…高尾くんは優しいから、今までずっとわたしと一緒にいてくれたんだよね。優しいから、自分から嫌だなんて言えずにガマンして…」
「………」
「…気付いてあげられなくてごめんなさい。……だからっ…わたしから。……これからはまた友達として過ごそう」
「………意味分かんねーよ。なんで、」
「それにっ……もうこれ以上高尾くんに迷惑をかけるのは嫌なの。わたしは散々自分勝手で、そのせいで高尾くんを傷付けてこんなケガまでさせて…最低だよね」
「おい夢」
「…わたしはもう高尾くんの側にいる資格なんてないから……っ」
「夢、オレの話も聞けって!」
夢はただ、高尾の手を優しく握って言った。
目に涙をためながら。
「…だから高尾くん、わたしと……別れてください。」
「……ッ」
「……今までごめんね。ありがとう。……バイバイ」
夢は涙を流しながら笑った。
「おい夢!待て!!」
するすると離れていく夢の手。
高尾はそのまま病室を出て行こうとする夢の腕を掴もうとして、ベッドの上から立ち上がろうとした。
しかし、その瞬間に脚に激痛が走る。
「………っ」
体に全く力が入らなくて、伸ばした手は夢に届くことなく病室の扉が閉まった。
「………クソッ……」
誰もいなくなった真っ白な病室で、高尾の声だけが力なく響いた。