第16章 ユラユラ
高尾はすぐさま近くの大きな病院に運ばれ、医師の治療を受けた。
夢はずっと、医師の治療が終わるまで高尾の無事を祈りながら外の椅子に座っているしかなかった。
しばらくすると診察室から看護師が出てきて、状況を説明してくれた。トラックと正面衝突したにも関わらず高尾は軽症で、骨折どころか脚の切り傷と打撲で済んだらしく命に別状はなく、一切手を加えることはないらしい。高尾を診た医師は奇跡的だと言っていた。
けれど、自分のせいで高尾に怪我を負わせてしまった。
謝って済む程度ではない。
後悔と罪悪感と、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
自分の身勝手な行動でどれだけ迷惑をかけてしまったことか。どれだけ深い傷を負わせてしまったことか。ただ自分を恨むしかなかった。
しばらくすると看護師から、高尾がいる病室に通された。本当なら、会うのにも躊躇する。改めて顔を合わせる時になんと言えばいいのか。合わせる顔すらない。
「高尾くんの病室はここですよ」
「…ありがとうございます」
看護師に案内され、着いたのは高尾がいるであろう病室。礼を言うと、看護師は笑顔でナースセンターに戻っていった。
ドアの前に立って、息を呑む。扉の向こうに入って、なんと言えばいいのだろう。入るのを躊躇いながらも、夢はゆっくりとドアを開けた。
ガラガラ…
「あっ、夢」
「……高尾くん」
「ごめんなー遅くなって!もう夜遅いし、帰っていいぜ!怪我は大丈夫みてーだけど念のため今日は入院しなきゃいけねーみてーだからさー…あ、あと少ししたら母さん来るし」
「………っ」
「…ん?どした?」
「……高尾くんっ……ごめんなさい…っ」
自分の顔を見るなり泣きながら謝る夢に、高尾は言った。
「……もう謝んなよ。…オレが怪我したのは自分の意思だったんだよ。」
「………」
また、涙が止まらない。
高尾の顔を見るだけで、高尾の声を聞くだけで涙が溢れてくる。