第16章 ユラユラ
「大丈夫!?」
「……いってー…」
脚を押さえてみると、
「!!?」
制服の下から染みてきた血が手にべったりとこびりついていた。
「……立てねー」
「今救急車呼んだかんな!」
見ると、男の人は焦ったように頭を抱えていた。
「すいませんっす……」
いきなりのことに、何が起きたのかまだよく頭が理解していない。
トラックに轢かれたと思ったらまだ生きていて、全身が痛くて起き上がったら高尾が倒れていた。そして今脚には血が滴っている。
…何が起こったの?
もしかして、わたしは、
全身の痛みも忘れるほどだった。
夢は放り投げられた自分のカバンからピンクの大きめのタオルを取り出すと、血が流れている高尾の脚にきつく縛り付けた。
どうにかして止血しようと、ただ何も考えずに涙を流しながら。
辺りを見回すと、この騒ぎに人が集まってきていた。
「…夢」
弱々しい声で高尾は夢の名前を呼んだ。
「…さんきゅ。……つか、大丈夫か?突き飛ばしてゴメンな。……痛かったよな…」
「……っ」
何も言葉が出ない。
こんな時まで自分の心配ではなく人の心配をするのか。
「……泣くなよ。もうお前の泣いてる顔は見たくねぇよ…」
あぁ、
「……っ」
「……でも、お前が無事でよかったぁ…」
やっと全て理解する。
そうだ、あの時感じた衝撃はトラックに撥ねられたからじゃない。
撥ねられる直前に高尾くんがわたしを守ろうとして突き飛ばして地面に体を打ち付けた衝撃だったんだ。
「心配すんなよ。オレも大怪我ってわけじゃねーし……運が良かったぜ。…死ぬかと思ったけど」
「……っ」
「二人とも運が良かったな。安心しろって。少し脚がいてーだけだからさ!」