第16章 ユラユラ
身体に大きな衝撃が走って、震えながらも恐る恐る目を開ける。
ここは天国かな。
天国だったらいいな。
そう思いながら。
けれど、恐る恐る開けた目で見えたのはコンクリートの地面だった。
…何かの夢だったの?
全身が痛くて、重い体を残りの精一杯の力で無理矢理起き上がらせる。すると、
「…………っ!!!!!!!」
数メートル先に人が倒れていた。
黒い学ランに黒い髪の男の子。
カバンは無残にも放り投げられていた。
うそ、
…うそでしょ?
……なんで?
「高尾くん!!!!!!!」
頭が真っ白になって、何も考えられなくて夢はただ倒れている高尾に駆け寄った。気付いた時には目から涙が溢れて止まらなかった。
あぁ、わたしは、
「高尾くんっ!!!高尾くんっ!!!」
側に駆け寄って倒れている高尾の体を揺さぶった。
何回か声をかけ続けると、閉じていた瞼がゆっくりと開いた。
「……夢」
弱々しい声ではあるが、高尾は確かに名前を呼べるくらいに意識はしっかりとしていて、大丈夫なのかそのままゆっくりと起き上がろうとする。
「おい!大丈夫か!!」
トラックの中から運転手と思われる中年の男の人が焦りながらかけ降りてきた。そしてポケットの中から携帯電話を取り出すと、一心不乱にどこかに電話をかけ始めた。
「救急車呼ぶから!待ってろ!」
「……いや…動けるんで大丈夫っすよ…」
なんとか高尾は立ち上がろうと、体に力を込めた。
だが、
「っ!!!」
今までにないような脚の激痛に耐えられず、そのまま力なく崩れ落ちた。