第15章 緑とオレンジ
「何で隠そうとすんの?」
「………」
そんなの、自分が比較されるのが怖いからだ。
何もかもが負けていると思われたくない。
少しずつでも高尾の気が自分に傾いてくれればと、そう願って作ったお守りはもう既に何の役にも立たない。
なら、高尾に気付かれる前に捨ててしまった方がマシだ。
「…本当にオレにじゃねーの?」
コクリ。
夢は小さく頷いた。
本当は高尾のものになってほしかった。そうなることを望んで作ったお守りなのにどうしても高尾に渡せないことが悔しくて、そんな自分が不甲斐なくて目に溜まった水が今にも溢れ出しそうだ。
また高尾に嘘をついてしまった。
「…誰か他のヤツにやるのかよ。」
「ちがっ…」
「…オレだって、」
「え…?」
何て言ったか分からないくらい、高尾は小さな声で言った。うまく聞き取れなくて、もう一度尋ねる。
いつも通る細い路地には今は誰もいない。高尾は夢に両手を差し伸べて立たせると、力ずくで壁際に夢を追いやった。
それが恐怖に感じて高尾の顔を見上げると、今までに見たことないくらいに冷たい目に怖くなって身じろぎしても後ろは壁。何も出来なくて夢はただ目をぎゅっと瞑った。
今まであんな高尾を見たことがない。
いつもニコニコしている高尾からは想像もつかないほど冷たい目。だからこそ怖かった。
…本当に怒らせてしまった。
「…夢」
名前を呼ばれても恐怖で声が出ない。
どうしていいか分からず、目から涙が零れた。