第15章 緑とオレンジ
「なんだこれ?…勝利、……K.T.?」
よく見ると、それはバスケットボール型だった。
「っ!ダメ!!!」
夢は素早く高尾からそのバスケットボール型のものを取り上げた。
まさか、
夢が手に握りしめてるものは、あのバスケットボール型のお守りだった。
毎晩、作り方を研究しては一生懸命作ったもの。
形は少し不格好かもしれないが、気持ちだけは込めたつもりだ。
夢が素早く奪い取った反動で高尾は尻もちをつき、手を後ろについていきなりのことに驚きで目を丸くしていた。
「…バスケ、勝利、K.T.……?」
「………」
「もしかしてオレ?」
「………っ」
「もしかしてオレへのプレゼント?」
やはり、気付かれてしまっていた。
高尾は特に感が鋭い。見つかってしまった時からまずいとは思ったが、まさかこんなことになるなんて。
こんなもの、渡せるはずがない。
夢はお守りを高尾に見えないように後ろ手に隠した。
「違うの!高尾くんにあげたいものはこれじゃなくてっ…」
「じゃ、それは何だよ?」
「………」
言葉が出ないどころか、返す言葉も見つからなかった。
何と言って誤魔化せばいいのだろう。思考をフル回転させても答えが導き出せない。
「…K.T.ってオレのイニシャルだろ?」
「ちがっ…」
さすがは感の良い高尾。
言ったこと全てが当てはまっていた。
だからこそ何も言い返せないし『違う』としか否定ができない。