第4章 秀徳高校バスケ部
「オラそこ遅れてんぞ!!ちゃんと床にタッチしろ!」
「ハイッ!」
秀徳の練習は帝光と同じかそれ以上に過酷なものだった。
中学で腕をならした者が毎日のように次々とやめていく。
ましてや一年生で練習後に居残りする者などほとんどいなかった。だが。
「ブフッ」
「…何がおかしいのだよ」
「いやあ…何度見てもすげーし…それに高すぎ!シュート!」
「うるさい…ジャマをするな」
緑間の肩を叩きながら笑うのを必死に堪えている高尾を緑間は睨みつけた。
「ワリーワリー。いや、否定する気はないぜマジ!」
緑間は大きなため息をついた。
「…それより、どーゆうつもりなのだよ?」
「へ?」
「最近オレが残っているときは必ずお前もいる。それに練習中も何かと張り合ってくるフシがある」
高尾はボールをドリブルさせながら何も言わずただ黙って聞いていた。ボールの音が静かな体育館に響き渡る。
緑間は一間あけてから続けた。
「オレに特別な敵意でもあるのか?」
「……………………」
高尾はしばらく黙ったままだった。
沈黙が訪れる。
「………まーな」
「!」
ドリブルをやめると体育館は静まり返り、さらにその場を緊迫させる。高尾はボールを小脇に抱え言った。
「つかやっぱ…思い出してはもらえねーか」
「?」
「オレ中学の時、一度お前とやって負けてんだけど」
ハッとした。
かすかに覚えている。最後の全中、何試合か目で闘った。緑間は思い出して俯いた。
「…………」
「悔しくて引退後も練習続けて…そんでいざ高校進学したら笑うわマジ」
「…………」
「絶対倒すと決めた相手が、同じチームメイトとして目の前にいやがる。心結と爆笑したぜ。……けど今さら敵意なんて持ってもイミねーしな」
高尾は手を広げてため息をついてみせた。
「むしろお前にオレのことを認めさせたかった。張り合ってる様に見えたのはそのせーかな?」
緑間は額の汗を拭って続けた。
「…なぜ言わなかったのだよ?」
「はい?」