第15章 緑とオレンジ
「ん?どした?大丈夫か?」
ずっと俯いている夢を心配してか、高尾は夢の顔をのぞき込んだ。
「大丈夫!目にゴミが入っただけ!」
すぐに目をこすって、顔を上げた。
こんな顔、高尾に見られたくない。
だから無理矢理笑顔を作って精一杯笑って見せた。
けれど、目からは微かに水がこぼれてくる。
泣いちゃダメなのに。
泣いてる顔なんて、高尾くんに見せたくないのに。
泣きたくないのに出る涙のせいで視界が霞んで、夢は制服の袖で目をこすった。
「大丈夫かよ?見せてみ?」
すると高尾は立ち止まって夢の肩を掴んだ。
ダメだ、見られちゃう。
この顔を見られるのが嫌で、夢は咄嗟に高尾に背を向けた。
「…きゃっ!」
だが高尾の手は夢を掴んだまま。
その場でバランスを崩した夢はそのまま倒れ込んだ。
「夢!」
コンクリートの道路の上で擦りむいたのか、膝がじんじんと痛む。辺りを見ると、チャックを開けたまま手放してしまったカバンがあった。中身がそこら中に散乱している。
「わりぃ……大丈夫か?痛くねぇ?」
「大丈夫っ…ごめんね」
微かに血が滲んでいる膝を押さえながら散乱しているカバンの中身を集めた。高尾も一緒になって物をかき集める。
教科書に筆箱、そして弁当箱まで。
全く、自分は何をしているのだろう。
このままじゃ本当に呆れられてしまう。また涙が溢れそうになった。
「ホラ、」
かき集めたものを高尾が手渡してくれた。ハンカチなんかはホコリを手で払い落としてくれる。
「これで全部か~……あ、コレ!」
物をカバンにしまい直して高尾の方を振り向くと、高尾はしゃがんだまま何か小さなものを手に持っていた。