第15章 緑とオレンジ
「今日も疲れた〜」
「お疲れ様!」
「まだ体育館が使えねーからさー毎日走り込みだぜ〜早く中で練習したいのによ!」
「いつも10キロも走ってるんだっけ?」
「そう!もうクタクタ…でも!」
「ん?」
そう言うと、高尾はゴソゴソとカバンの中身をあさり始めた。何かを探しているのだろうか。
しばらくカバンの中をあさると、高尾は何かを取り出した。
「じゃーん!見ろよこれ!」
高尾が手に持っていたのは一つのマスコットのようなものだった。よく見ると、見覚えのあるユニフォームがかたどられていた。
「秀徳のユニフォーム型のお守りだってさ!すごくね?」
「えっ……」
高尾がカバンから取り出したのは見覚えのある秀徳のユニフォームのお守りだった。
「マネージャー全員で手分けして作ったんだってさ!すげーよな、ちゃんとオレの背番号になってるし、不撓不屈って書いてあんだよ」
「…すごいね、とってもきれいにできてるっ」
「だろー?…あ、そういえば夢からのプレゼントは?」
「…ごめんね、まだできてないからもう少し待ってね…っ」
「あ?あぁ」
…渡せるはずがない。こんなものを見てしまったら。
自分が作ったものなんかよりもずっとキレイにうまくできたユニフォーム型のお守り。
誰が作ったのかは分からないが、きっと心結が作ったものだろう。
心結はとても裁縫が上手だった記憶がある。さっきのものもあの時見たものと同じくらいきれいに上手にできていた。
あんなに上手にできたお守りのあとに、こんなもの渡せるはずがない。
涙が溢れそうになった。