第15章 緑とオレンジ
チクチクチクチク…
毎日少しずつ、時間をかけて縫う。
久々だからということもあるが、慣れないことに針で指を刺してしまったり何度縫ってもきれいに縫えない。
「もうっ!」
学校から帰ってきたらいつも決まって自室で裁縫をする。端を縫って、綿をつめて…
けれどそれがうまくいかない。
「きれいにお守りできたら少しは喜んでくれるかなぁ…?」
慣れない手付きでチクチクチクチク。
ひたすらきれいに縫えるまで縫う。何度も繰り返し。
お守りはバスケットボール型にして、高尾に渡すつもりだ。
丸型に縫うのが意外と難しくて苦労する。うまくできなくて、たまに投げ出してしまいたくなる。
けれど高尾が喜んでくれた時の顔を想像するとまた頑張ろうと思えた。
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いつもの学校終わりの帰り道。
並んで歩く高尾と夢。
歩きながら高尾は飴玉を1つ、口に含んだ。
「夢にもやるー」
「あっ、ありがとうっ」
高尾は小さな飴玉を夢に向かってぽいっと投げた。慌てて夢はそれをキャッチする。
すぐに飴玉を口に含むと、甘いイチゴの味がした。
「お前イチゴ味好きだろ?」
「うん!…よく知ってるね!」
「いつもイチゴ味食べてんじゃん。飴もかき氷も。去年の夏祭りでもイチゴのかき氷と苺飴食ってたもんな。」
「…知っててくれたんだ」
「知ってた!」
知っていてくれたことが嬉しくて、ちょっとだけキュンとした。
わたしももっと高尾くんのことが知りたいし、もっと何かしてあげたい。