第15章 緑とオレンジ
「なぁ夢」
「ん?なに?」
「ちょっとさ、付き合ってくんね?」
無性にどこかに行きたくなって、学校の帰りに夢を誘った。
快くOKしてくれて、昔よく行っていた場所に夢を連れていくことにした。
嫌なことや悩み、忘れたいことがあったとき、高尾はいつもその場所に行った。
ここに来ればそんなことも全て忘れられる気がしたから。
「そこから見る景色がすげーんだよ。ほんとに感動する」
「そんな場所がこんなに近くにあるなんて知らなかったよ」
「きっと誰も知らない特別な場所!」
きっと、大抵の人は知らないだろう。地元の人でさえ分かりにくい場所だ。
最近はあまり来ていなかったが、記憶を辿ればいつも人がいた覚えはない。
きっと今日もいないはず、、、
そんなことを考えながら夢を連れて歩いた。少し急な坂道をただまっすぐ登る。
ゆっくりと、夢の歩幅に合わせて。
「あともう少し!」
「よーしっ!」
そう言うと、夢はカバンを握りしめて高尾を追い越した。そのまま坂道をかけていく。
「ちょっ、夢!」
「高尾くん早く!」
ふと後ろを振り返ると、もう小さくなった高尾と、不意に見えたキラキラの夜景。
眩しいほどに光り輝いていた。
もっと高いところで、一番高いところでこの景色を見たくて、夢はまた駆け出した。後ろからぜーぜーと息を荒くした高尾が追いかけてくる。
あと少し、この階段を登れば頂上だ。早くあの景色を見たくて、夢は走るスピードをさらに速めた。
そして、ついにあと1段。