第15章 緑とオレンジ
「すまない。……だが」
緑間は言いかけると、俯きがちだった視線を上げ高尾と目線を合わせた。そして続ける。
「……だが、高槻は譲れない。」
「………」
「オレは高槻が好きなのだよ。手放したくない。……お前には悪いが高槻だけは譲れない」
「………」
「……それに、お前は西堂をどう思っている?あいつは、きっと本気でお前のことが好きなのだよ」
緑間がただ一方的に喋る。
言葉一つ一つが重すぎて、こんなにたくさんの言葉を一気に受け入れられない。脳は緑間が話していることの意味を理解しようと必死だ。
「……お前は西堂を何とも思っていないのか?」
「………」
本当に、何も言い返せない。
言い訳の言葉すら見つからなかった。
「キツいことを言うようだが高尾、お前が西堂を何とも思っていないなら別れた方がいいのだよ。これでは西堂を傷付けるだけだ。」
「………」
「……少しは西堂の気持ちも考えてやれ」
そう言うと緑間はゴール下に転がっているボールを体育館倉庫にある籠に戻した。
「………用事ってこれを言うためかよ」
「……そうだ。」
そう言い残すと、緑間はそのまま体育館を出て行った。
「……クソっ」
どれほど時間が経っただろう。
あまり時間が経っていないのに、何時間も、そこだけ時間が止まっていたように感じられた。
心臓がズキズキと痛んで、鳴り止まない。
高尾は一人になった体育館で、拳を握り締めて奥歯を噛んだ。
「……クソっ…戸締りも鍵返しに行くのもオレがやらなきゃじゃねーか……」