第15章 緑とオレンジ
「……お前は、高槻のことが好きだろう」
「……は?」
予想もしていなかった緑間の言葉に高尾は身をビクリと震わせた。その瞬間、背筋に嫌な寒気が走った。
言葉がすぐに出てこなくて返事に困る。
「高尾、お前は高槻が好きだろう」
「え?何言ってんの?べつに好きじゃねーし!……つかオレには夢がいるじゃん!」
だんだんと、自分でも汗をかいてきているのが分かる。
焦って返事も曖昧で投げやり。精一杯返事をしても、緑間からはなんの答えも返ってこなかった。
下を向いているといかにも嘘をついているかのよう。
だがそれよりも何よりも、緑間に全身を見透かされているようで怖くなって、高尾は恐る恐る顔をあげた。
すると、そこにはいつもと変わらない緑間の顔。
「……好きではないのか?」
「……好きじゃねぇよ。」
体育館には緑間と高尾以外に誰もいない。
今それがとても不気味で怖くて、自分でも良く分かるくらいに心臓の音がうるさく響いて鳴り止まなかった。
「……そうか」
この音が緑間にも伝わってしまったらどうしよう。
焦りと不安で手のひらを握り締めた。
だが緑間は高尾から視線を外すとただ一言だけ「そうか」と言った。
何とか何もバレずにやり過ごせた。そう思って高尾は小さく息を吐き出し、片手で持っていたことさえも忘れていたバスケットボールを静かに床に置いた。
「真ちゃんいきなりどうしたんだよ」
一安心して、苦笑いしながら言った。
やり過ごした、そう思ったはずなのに背筋には冷や汗が伝った。
その時、
「……お前は、嘘をつくときいつも視線を逸らす」
「……は?」
「お前は嘘をつくとき必ず視線を逸らすクセがある。オレが今好きではないのかと聞いた時も視線を逸らした」
「………っ」
一瞬、緑間が放ったその言葉がどんな意味を持っているのか理解できなかった。
けれど背筋を流れる冷や汗は止まらない。しばらく考えて、やっとその意味を理解する。
その言葉はどんなに重い意味を持っているだろう。