第15章 緑とオレンジ
「すまないが今日は先に二人で帰っていてくれないか?高尾と話したいことがある」
左指に巻いてあるテーピングをするするとほどきながら緑間は言った。
「オレ?」
「練習するの?」
「まぁ…そんなところだ」
「分かった!先帰ってるね!」
そう言うと心結と夢は背を向けて体育館を後にした。
もうほとんどの生徒が体育館を出て行き、残っているのは緑間と高尾、そして少しの生徒だけだ。
「で、二人っきりで何するの?まさか……!!」
「なんだ」
「キャッ♡」
「…………」
「やめてそんな白い目で見ないで真ちゃん」
緑間はもはや白目で高尾を眺めた。
高尾はぶーっと頬を膨らます。
居残っていた最後の部員から鍵を受け取ると、体育館の出入り口を開けたまま緑間は言う。
「すまないな、呼び止めて」
「べつに構わねーけど。なんだよ?」
高尾は片付けたはずの籠からバスケットボールを二つ取り出すと、片方を緑間に投げた。
きっとまた、バスケのことか何かだろう。
緑間から返事を待って、指でバスケットボールを回してみる。
「聞きたいことが、あるのだよ」
「……なに?」
ゴクリ。
唾を飲み込んだ。
緑間はテーピングをしていない手でゴール目掛けてシュートを放った。
かなりの距離があるが、いつもの如く、ボールはバスケットゴールにかすることさえせずに吸い込まれていった。吸い込まれたボールは二人だけの体育館にバン、と音を立てて落ちた。
最近は居残り練習をする回数も減った気がする。
減ったのはいつからだろう。
拾いに行くことはせず、緑間はボールをそのままにして高尾に向き直った。